設立の趣意および現況

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日本バイオセラピィ学会設立の趣意

日本バイオセラピィ学会は、がんなどの難治疾患に対する免疫療法を確立するという理念のもと、1987年JBRM(Japanese Society of Biological Response Modifiers)研究会として諸先輩有志によって設立されました。BRMは1975年Dr.V.T.De Vitaが提唱した概念で、「がん細胞に対する宿主の生物学的反応を変化させることによって、がんと宿主との関係を是正し、それによりがんに対して治療効果を上げる物質または試み」とされ、がんの免疫療法研究の過程で生まれたものです。以後、学会名は、1988年JBRM学会、1995年日本BRM学会、1999年より現在の日本バイオセラピィ学会と名称を変え、今日に至っています。

この間、がん治療は確かな発展を遂げてきました。すなわち、手術、放射線治療、抗がん剤や分子標的薬による薬物療法という3大治療の進歩と同時に、臨床試験に関する理解の進化に伴う発展といえます。

その発展の陰でバイオセラピィは、サイトカインのクローニング、がん抗原の同定、樹状細胞の培養、抗体のヒト化、新規免疫細胞の同定などを通じて研究され、大いなる期待の一方で限界にぶつかることを繰り返しながらも、研究者の情熱で確実な発展を遂げてきました。

2014年に始まる免疫チェックポイント阻害剤の登場は多くのがん腫の標準治療を塗り替え、加えて、2017年に米国において遺伝子改変Tリンパ球が承認されたことは、免疫療法が第4のがん治療として確かな市民権を得る旗頭となっています。がんに免疫系が作動していることは、もはや疑う余地のない事実として世界的に認識され、がん治療の方向性は、がんに対する免疫応答をいかに作動させるか、腫瘍免疫を中心とした治療戦略の開発が世界規模で競争されています。今後、個々の症例の局所および全身情報(ビッグデータ)に応じた治療選択がなされるprecision medicineの時代が到来すると予想され、それはまさに目前であると言えましょう。腫瘍免疫の知識は、その道の研究者のみならずがん診療に携わる全ての医療従事者や企業のみなさま、さらには一般市民のみなさまにおいても、無関心ではいられない時代を迎えています。

このような潮流の中、日本バイオセラピィ学会は創立30年を超える歴史を背景に、学術集会を通じて情報や意見の交換をはかり、かつ討論していくことによってがん征服へ寄与する研究を益々発展させるとともに、腫瘍免疫に関する情報の発信や教育・普及・啓蒙活動を通じて社会に貢献してまいります。医学臨床研究者のみならず医学・薬学・生物学など、多領域の基礎的研究者および関連企業のみなさまも、腫瘍免疫学、生物科学・人間科学に関心のある人々の参加をここに広く呼びかけるものであります。

日本バイオセラピィ学会の現況

上記趣意に示しましたように、本学会はバイオセラピィの研究をとおして、がんとがん関連疾患に対する生物学的治療に貢献することを目的としております。毎回、がんをはじめ様々な疾患に対するバイオセラピィに関連した500名近い多彩な参加者により白熱した討議が行われます。学会としても今後のバイオセラピィ開発・実践の基本となる「日本バイオセラピィ学会臨床試験ガイドライン」(Biotherapy 15(3):408-424,2001)の作成や、『がんペプチドワクチン臨床試験ガイダンス』(Cancer Science 105(7): 924-931, 2014)の作成、学会としての研究の援助、本学術集会や他学会、関連企業の企画、あるいは市民公開講座などにおける教育活動の推進・参画・監修・後援に邁進するなど、本学会の果たす役割は益々増加してきております。